夏だ。
今年も夏が来てしまった。
四季があるというのは素晴らしいことだと思う。
夏祭り、花火大会、その他諸々、夏の行事の雰囲気はめちゃくちゃに好きなのだが、強烈な日差しと湿気のダブルコンボで−2兆点である。
そして朝っぱらから元気に鳴くセミ達。
セミの鳴き声を聞くとどんだけ嫌でも感じてしまうこの「夏」という季節。ただでさえ暑いのにこの鳴き声を聞くと体感温度3℃くらい上がる気がする。1週間という短い命を全力で生きたいセミの気持ちはお察しするが冷静にもうちょいボリューム落とせるかな???と交渉しに行きたいし、ひっくり返ってるからもう既に命尽きているのかと油断して近づいた瞬間突然羽ばたくセミにより人生で5回は死にかけている。一瞬の同情を返してほしい。めちゃくちゃ元気やないか。
話がセミで終わりそうなところだが、
私が話したいのはこんなことじゃねえんだ。
夏になると毎年私が必ずと言っていいほど思い出す話があるので、今日はそれを一方的に話したいと思う。
時代は遡り、中学時代。
私の通う中学はお世辞にも治安が良いとは言えなかった。むしろ最高に悪い。
例えばというと、授業中に突然防災ベルが鳴り響いたと思えば廊下で生活指導の先生とヤンキーが鬼ごっこしていたり(先生は純粋に捕まえたいだけ)
放送室にヤンキーが1日立て篭もるという最高に意味のわからねぇ事件が起きたりもした。今思い返すとなんかもう一周回って笑えてくる。
そんな中学での出来事だ。
これから話す内容も、
良い子は絶対に真似しないで頂きたい。
それは夏休み前、猛暑の日の出来事。
私は謎にヤンキー達に慕われていた。
以前同窓会の時に「〇〇(私)が全ての黒幕なんじゃ……?」という話が職員室で出たことがあると担任からカミングアウトされた時は手を叩いて笑ったが、仮に私が全ての黒幕だったとしたら放送室ジャックなんてダサい発想は命を懸けてもしないので安心しろ。話を戻す。
そう、めちゃくちゃあの日は暑かった。
突然同級生のヤンキーに廊下で声をかけられた。
ヤ「ねえねえ!」
私「なに?」
ヤ「目玉焼きと卵焼きどっちが好き?!」
なんだこの質問。怖すぎる。
真夏の廊下で突然こんな質問をされ、恐怖に震えた私は適当に「目玉焼き」と答えるとヤンキーは満足気に「なるほど♪」と去っていった。
そして1日の終わり、帰りの会の時間。
(一体あんな質問して何なんだ。適当に答えたけどぶっちゃけ目玉焼きよりも卵焼きの方が好きだわ)などと色々考えていると、最後は担任の話になった。
担任「えー、今日△△先生の車のボンネットに生卵が落とされてました。何か知ってる人が居たら…」
「アイツじゃん」
理解するのは秒だった。もはや瞬だった。
ちなみに被害者の△△先生というのはどの学校にも1人はいるであろう前世で一体何したんだってくらい全生徒から嫌われている先生だった。しかし相手がそんな先生であれ、アイツは一体何をしてる。
ともあれ「目玉焼き」と答えてしまった建前、
謎の罪悪感に包まれた私はすぐに先生には言えず、
部活終わりに偶然そのヤンキーに会ったので少し呼び出し、あの質問の真意を問いただした。
ヤ「あー!今日めちゃくちゃ暑かったから車のボンネット火傷するくらい熱くて!なんか作れるかな〜と思ってアンケート取ってたんだけど結局目玉焼き焼けなかったわ〜」
わたしは「やっぱりお前かい」と心の中で言いながらひたすら頷くことしか出来なかったが、最後に「これから料理する時はフライパン使おうね」とだけ伝えた。何この時間。
次の日、学校でこの件を担任に伝えようとしたが、その時にはもう既に例のヤンキーは先生にお説教されていた。どうやら現場を誰かに見られていたらしい。私はなんとも言えない気持ちになった。なんの目的かも知らず「目玉焼き」と答えただけでまさかこんなことになるとは思ってもなかった。というか思うはずがない。どんだけ想像力豊かでも無理だろ。
そんでもって卵焼きと答えたら卵焼きを作るつもりだったのか彼は。正真正銘のアホじゃないか。
まぁそんな彼も今はちゃんと職人になって子供もいて社会人を全うしているのだから、人間何が起きるか分からないものである。
以上が私の夏の思い出話。
もっと良い話あっただろとは自分でも思うが、私は何故かこの話を毎年ふんわり思い出すのだ。
とりあえず、言いたいことはただ一つ。
早く冬になりますように。